近世美術として知られているブロンズィーノの「愛の寓意」は、謎の多い官能的な作品として知られています。作品において謎とされている部分は、描かれている人物描写によるもののようです。愛欲をあらわしているであろうヴィーナスとキューピットは、母親と息子の関係でありながら「愛」がもたらす享楽を愛撫をかわす形で描かれております。さらにはヴィーナスの手には弓とリンゴがありますが、彼女の仕草には危険の暗示が隠されているなどと専門家たちは推測しているようです。キューピットの足元には、怠惰をあらわすピンクの枕、ヴィーナスとキューピットの足元には、物欲や偽りを表す老人と青年の仮面。背後には欺瞞(ぎまん)を表す、緑色と虹色のドレスをまとった竜の少女のモンスターがハチミツと毒を手にしています。嫉妬をあらわす老婆の背後には、青紫のベールがひかれ「時」の老人と、その娘「真実」がベールを剥がそうとしているようです。ブロンズィーノの代表作とも言われマニエリスムの技法が作品の特徴でもあります。